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報告1 島根県大田市井田地区「井田いきいきタクシー」について

【1】 はじめに 

 令和7年2月5日午後1時頃、島根県大田市温泉津町井田255番地「井田まちづくりセンター」に到着。
 井田地域自治会会長の鳶川秀信氏、井田まちづくりセンター長の板倉満幸氏、井田いきいきタクシー運営協議会の殿山裕子氏、大田市政策企画部まちづくり定住課課長の大迫学氏、同まちづくり推進係主任主事の中祖優基氏のお出迎えを受けました。

【2】 事業の概要

 井田地区は、大田市の南西部に位置し、人口450人、237世帯、高齢化率63.41%であり、地区内に14の自治会を有しており、市全体の高齢化率が41.75%に対しかなり高い比率となっています。
 地域尾公共交通は直営バス1路線のみという現状があり、高齢化により過疎化が進み、地域公共交通の必要性が高まりました。
 2016年の約半年間、地元タクシー事業者でデマンドタクシー実証実験に取り組まれましたが、時間・乗車時間を定め、バスとタクシーの中間のような形でスタートしたことにより、不便なことへの不安の声が高まり。持続可能な街づくりに取り組む協議かスタートしました。
 2019年には「井田いきいきプロジェクト」がスタートし国土交通省新モビリティサービス推進事業定額タクシー実証実験がオンデマンドスタイルで行われました。
 その結果、毎月定額3,300円で井田地区から温泉津中心街を移動できるサービスを開始しました。(利用年齢は問わず)
 2022年には、地域法人「企業組合井田屋」がセレナ(7人乗り)を購入し、大田市、運営支援会社である「㈱バイタルリード」、郵便局、石見交通等で構成する実証プロジェクトで持続可能な地域交通を目指しました。
 2025年には運行範囲が隣町の川本町まで拡大されるに至りました。
 定額3,300円の根拠は50名の利用者を想定し頭割りした金額であるとご説明いただきました。
 利用料については、基本は金融機関の引き落としが多いのですが、都会で暮らす、子や孫からの「ふるさと仕送りサブスク」を活用して利用することもできます。(子や孫が定額3,300円分を支払うシステム。実際は3,600円と5,000円のプランがあります)
 さらに、AIを活用して利用傾向を分析したり、乗合するコースを自動設定うできるような仕組み作りも行われています。
 一方で操作の苦手な方もいらっしゃることから、代理予約システムも実施しています。病院や協力店舗、公民館などで活用されています。
 運営は「井田いきいきタクシー運営協議会」を設立し、「まちづくりセンター」内で活動されています。
 利用者の皆様にも好評のようです。
 一方「まちづくりセンター」は、井田地区の、幼稚園、小学校、中学校が統廃合されたことにより、「まちづくりセンター」として再利用され、タクシー事業の応援や地域コミュニティづくりに様々な取り組みも行われています。
 「企業組合井田屋」では、地域タクシーの財源確保をめざして2021年に結成され、食品衛生講習や、法人化の勉強会を得て、焼肉の「たれ」をセンター内で製造・販売されています。県内の「道の駅」や東京日比谷の「しまね館」でも販売開始されています。
 「井田いきいきプロジェクト」活動では、ワークショップを行い、問題点を洗い出し、井田地域ビジョンの策定に至りました。
 その中で「小さなビジネス」として布小物類を製作し、販売し、タクシー料金の一部になればという思いが基本理念にあります。
 「井田よろずカンパニー」では、井田地区の竹の有効活用、竹細工の技術伝承を目的に活動が2021年にスタートしました。「背負い篭、ミニ門松、竹灯籠、かごバッグ」等を道の駅で販売され、タクシー事業の応援がされています。また、炭窯を製作し、間伐材の有効利用と炭制作技術の継承を目的に活動されています。
 「地域食堂井田屋」では、月2回のワンコインランチが開催されています。

【3】 最後に

 井田いきいきタクシーは、井田地区内の過疎化への取組み。交通手段の確保という大きな問題を解決するための手法であると感じました。
 タクシー事業を維持するために様々な取り組みもおこなわれ、地域一体となった取り組みであると感じました。
 人口規模が違う中、貝塚市でどのように活用できるかは難しいかもしれませんが、一つの事業で多くの取組みが生まれると言う事は、参考にしなければならないと感じました。

 報告2 島根県松江市「不登校オンライン授業」について

【1】 はじめに

 令和7年2月6日午前10時頃、島根県松江市末次町86番地の松江市役所へ到着。
 松江市議会事務局長の田中孝一氏のお出迎えを受け、歓迎のご挨拶をいただきました。
 続いて、松江市教育委員会生徒指導推進室室長の奥原章公氏、同主幹の田中啓行氏より「不登校オンライン授業」についてご説明いただきました。

【2】 事業の概要 

 不登校児童・生徒を対象とした、オンライン授業を「ボタンねっと」とネーミング。松江市の市花は「牡丹」であり、タブレットは「ボタン」を押して作動する事から「ボタンねっと」となりました。
 そこまで説明をうけ、急遽ではありましたが、「ボタンねっと」の配信場所を見学させていただくことになりました。
 その場所は教育委員会の一室の部屋でパソコン2台を設置し行われていました。
 2名の先生(教育委員会の指導主事)が、交代で担当しており、当日は、6~7名の生徒が入室していました。そして、生徒たちはナンバーとニックネームで「顔出しは無し」で行っていました。
 ちょうど「おはようタイム」が行われていました。
 そこで、私達二人も登場する事になり、貝塚市の紹介をさせていただきました。
 南野からは、「東洋の魔女」「バレーボールのまち」「日本生命卓球部」「日本生命野球部」、そして名刺(つげさんバージョン)を用いて「つげさん」の紹介をしました。
 阪口芳弘からは、貝塚市の寺内町や「水間寺」、戦国時代の歴史について、「千石の杜」のドローン・クリケット広場の紹介が行われました。
 子ども達はネット上では「声出しも無し」であり、Zoomの拍手機能やチャット機能で反応を示していただきました。
 配信場所を後にして、引き続き事業について説明いただきました。
 令和5年度の実証事業として取り組まれたのですが、令和4年で767名の不登校児童・生徒があり、内266名が学校内外における相談・指導を受けていないという状況でした。
 そんな中で、どのようなアプローチができるか様々検討した中の一つが「ボタンねっと」です。
 令和5年9月より実証実験がおこなわれました。令和6年段階では、「どこにもつながらない子どもをなくす」「学びがとまらない」事を目的とし、「“つながる”ことを第1に!自分のペースで学びをすすめる」事を重点において実施されています。
 配信期間は、4月~3月の平日。長期休業中は配信なし。随時受付
 対象は、小学校5年生~中学校3年生(義務教育学校は5年~9年生)
 参加者は、学校配布のタブレット使用または、自身のパソコン等。但し家庭にWi-Fi環境は必要。
 1日の予定は
  10:00~10:30 おはようタイム(当日の予定の確認。雑談など)※私達が参加した時間です。
  10:30~11:45 まなびタイム(支援員による授業)
  11:20~12:00 自主学習タイム(自学(AI型ドリル)及び解説)
  14:00~14:15 こんにちはタイム(参加者確認。雑談など)
  14:15~14:45 バービータイム(学習動画の視聴)
  14:45~14:55 またねタイム(ふりかえり、次回の連絡等)
 となっています。
  申込については、随時受付しており、希望家庭が学校や市教委へ連絡し、手続きを行うようになります。
 また、「ボタンねっと」に参加した日は、校長の判断により出席扱いにできるようしています。
 予算規模としては、令和5年の実証実験時は103万円でした。これはパソコンなどの機材購入費やZoomアカウントの取得費用、先進地(熊本市)への視察費用で、令和6年度は60万円となっています。

【3】 今後の課題と意見交換

 

今後の課題は、松江市は庁舎建替え途中です(半分出来上がり、半分は現在建設中)。教育委員会も新庁舎へ移転予定で、配信ホームを以下に充実できるかという問題意識も持っています。

 さらに、スタッフの負担軽減も課題となります。スタッフ7名中、指導主事が5名。その他総勢20名で回しながら実施しているが、まだまだ個人負担が大きいとの事です。
 現在70名の児童・生徒が登録していますが、1日平均10名前後の参加となっています。子ども達の感情に波もあるし、気に入る授業、気に入らない授業もある事からそのような参加数になるのだろうと分析されていました。
 子ども達に飽きさせない事も大切だとおっしゃっており、「お出かけタイム」として松江城の天守閣から配信したりもしたそうです。
 一方「配信授業を知らなかった」言われることもまだまだ多く、いかに周知させるかも今後の課題となっています。
 不登校保護者を対象として集いなども開催しながら、「取り残す子どもの出ない」松江市をめざした取り組みにしたとの事です。
 「不登校」児童・生徒に対するアプローチは様々あると思いますが、一つの取組みとしては重要だと感じました。