全国市議会議長会研究フォーラムin高知の報告書を提出しましたので掲載します。

 

はじめに

令和元年10月30日午後12時10分頃、高知県合志市布師田3992-2高知ぢばさんセンターへ到着。

午後1時より高知市議会議員の皆様の歓迎のアトラクション、高知市紹介ののち、全国市議会議長会会長、高知市議会副議長、高知市長などの歓迎のあいさつなどが開会式として行われました。

 

 

 

 

報告1基調報告

基調報告は、東京リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志氏より「現代政治のマトリクスリベラル保守という可能性」と題して行われました。

中島氏は自由民権運動の研究

政治のマトリクスについて

 

レジメにそって説明があり、結果的には上記表のように分類されると指摘しながら講演いただきました。

政治とは二つの仕事があると指摘。

1つ目は内政面であり、2つ目はお金をめぐる仕事である。

 価値観をめぐる取り組みであり社会性のリスクに重点に置くか個人に置くかで指標をかえるようにする。

またリベラルとパターナルへ区分し価値を判断することができるとの事です。

この「リベラル」とは「寛容」を意味する言葉として定義しています。

そもそもリベラル派ヨーロッパ30年戦争時に決着がつかず、双方寛容になろう、互いを認め合おうという思想の元「リベラル」が生まれました。

自分の思想と違っても寛容になるという意味も込められたとの事です。

その考えをもとにリベラルの反対が「保守」ではなく「パターナル」(父権的)と位置付けて解釈し強い権限を持つものに従うと定義しています。

そこでお金と価値を基準に上記4つの区分に分けて現在の安倍内閣はⅣの区分になるであろう。理由は強い権限を持ちながらも保育園や幼稚園の無償化など社会的に近いのではとの見方もできるとの事。

また基準の判断には国際的基準に基づき数値を出すとの事です。その一つが国家歳出の規模や公務委員数でみると日本は小さな政府との位置づけになるそうです。

この間の3回の総裁選挙後に当選した議員をみるとⅣの区分の議員が多い事も指摘されました。

一方、列島改造論を提案した田中角栄氏はⅠの区分。当時保守の危機という言葉を利用して強いリーダーシップを発揮したのは周知の事実であります。

当時自民党は地方が強かった。しかしその地方の人口がどんどん都市部(東京)へながれ力を弱めた。その後、大平正芳氏が政権をとったが、大平氏と田中氏はライバルでありお互いを認め合う存在でもあったし、お互いがないものを持っていることで尊敬しあう仲であったとの事でした。

話はそれたたが大平氏はⅡの区分。大平氏は政策力は現在も通じるものがあるとの事です。

いわばⅠ区分とⅡ区分が保守本流と言われました。

しかし、中曽根内閣から小泉内閣へと移る中、価値観は個人化へながれていきました(Ⅲの区分)

一方野党は2017年の希望の党の結党。しかし総選挙では立憲民主党が躍進。

希望の党が自民党に対抗しうる政党にならなかった事と、「枝野立て」「立憲民主党はあなたです」というキャッチフレーズで希望の党に所属することができなかったメンバーが固まって躍進した。

しかし、この間の国会の中での「立憲民主」vs「国民民主」の野党第1党争いが国民から見たら「永田町の争い」とみられその勢いは失われてしまった。

ラディカルデモクラシーは熱しやすく冷めやすい特徴があり今回は正にその通りになったといえます。

今回の参議院選挙で「立憲」に代わって躍進したのが「れいわ新選組」であった。

政治は対抗軸である。先の指標で対角にある部分の共闘はありえない。

リベラル保守を目指すことが重要ではないか。

人間の理性などパーフェクトではなく、人間は間違いやすい動物であり人間の不完全性を求めることも大切である。

また保守は何も変えないのではなく、大切なものを守るために何か変えないといけないという発想が大切。

革命ではなく、グラデーションのように少しづつ少しづつ変化させていくのが保守であり永遠の微調整が行われます。

その事を合意形成できるようにするために日々政治を行うこととなると指摘され講演が終了しました。

 

 

報告2パネルディスカッション~議会活性化のための船中八策~

 第2部としてパネルディスカッションが行われました。

コーディネーターは坪井ゆづる氏(朝日新聞解説委員)でパネリストとして、高部正男氏(市町村職員中央研究所学長)、横田響子氏(㈱コラボラ代表取締役/お茶の水女子大学客員准教授)、古川康造(高松丸亀町商店街振興組合理事長)、田鍋剛(高知市議会議長)が務められました。

高部氏

都道府県議長会の事務総長や現在の職員研修機関に携わっている。実は父親も議員と市長を経験しておりその苦労は身に染みて理解している。

自治省に入省後、地方自治体へも出向し現議会で答弁する立場でもありましたと自己紹介されました。

横田氏

4歳の時に多様性に目覚める。外国で生活の中で、肌・目・髪の毛の色の違い、日本に帰ってから同じ色の髪の毛や肌の色を経験した時に、世界には色んな人たちがいるのだと認識。

これまで女性社長ドットネットを立ち上げたりもしており、女性の視点で意見を述べたいと自己紹介されました。

古川氏

高松市丸亀商店街の理事長を務めており、丸亀商店には全国から視察も来られる。連日全国の議会からも視察にこられ注目されている。中心市街地の活性化について意見を述べたいと自己紹介されました。

田鍋氏

元高知市職員で議会が進むべき方向性を考えたい、また議員活動と議会活動をバランスよく行いことが目標であると自己紹介されました。

坪井氏

「議会の体制についてどういう認識をされているか?どういう想いがあるか?」質問がありました。

高部氏

 依然の号泣会見を参考に、例外的不祥事が大きく報道されることで全体に影響がある。多くの議員は一生懸命取り組んでいるのですが、マスコミの報道も考えるべき。それが低投票率の一因でもあるのではないか。

2つ目の問題意識としては、無投票当選が増えたこと。これは議員のなり手不足が課題と認識する。

3つ目に女性議員・若手議員が少ないということが指摘されました。

以前は無投票当選イコール、なり手不足とは位置づけられていなかったが、近年はそう位置付けることが主流といえる。また深刻な問題でもある。

ここには議会で「何をしているかよくわからない」「審議が形式的」という意見があるのも事実。

好意的な意見としては「議会改革の取り組みが全国的に広がっている」というものもある。

また議会基本条例は全国6割以上の自治体で制定されている。住民からの目線をもとにして検討されることが多いと考えます。

一方で基本条例は、議会で議員間で議論して作ることは本当にいいこですが、条例にとらわれる必要はなく、議会改革の出発点であるだけという認識でもいいという考え方もある。決してゴールではなくその後に何をするのかが大切であると指摘されました。

横田氏

 自身、東京都の都心部に居住しているが、地方選挙では正直公営掲示板のポスターを見て家に帰ってネットで政策など調べて投票する方を選んでいる。

日々の各々の取り組みは正直わからない。議会とのつながりが全くないのも現実であり、多数の方々が同じ感覚ではないか。

その中で10から20年後の幸せの議論が必要で、中長期的な取り組みが必要となってくる。そこには人口がますます減少することを認識した中で議論しなければならないと考える。

霞が関でも一時人口減少にどう歯止めをかけるか議論されていたが一時ストップし最近復活されました。

また何でも作りっぱなしになっていないか?と自身で振り返る事も大切で、データ・数字(EBPM)をもとに政策を立てることも重要ではないかと指摘されました。

PDCA(「Plan=計画」「Do=実行」「Check=評価」「Action=改善」)をしっかり確認することも重要であると指摘されています。

さらに多様性のある議会、特に若手や女性の活躍できる議会であらねばという認識を示されました。

古川氏

 市の中心部の商店街が壊滅的な状態であり、国策としての再生を図らないと解決しない問題と認識する。

しかしここには公費を投入し商店街を活性化する必要があるのかという批判的な意見がある。自助努力が必要で店をつぶすのは本人の努力不足であるという意見も多々あります。

バブル景気崩壊以降壊滅的な状態が続いている現状はその事だけで解決できるものではない。

商店街がスラム化すると市の財源の問題にも影響があるはず。当商店街が壊滅状態の中住民も少なく居住する市議会議員もいない。

各地域の代表である議員を抱えない商店街の活性化の議論はなかなか進みずらいが、全体の利益を考える必要はあり、市全体としてとらえる必要があるとの認識で取り組みが進んでいった。

 

田鍋氏

 高知市議会は議員定数34。そのほとんど専業の議員である。立候補者数は一定あるが女性の立候補は少ない。

低投票率が課題である。これまで比較的投票率が高いと言われていた年齢層(40代から50代)もどんどん投票率が低下している。

課題としては政策を提案できる議会でありたいと認識する。議会基本条例も意義深いとは思う。個人的には少し整理もひつようかもしれないと考える。

また二元代表制(首長と議会)とよく言われるが、肌身ではそう感じない部分がある。

首長は職員を使えるし、行政の代表として権限も大きい。その差をどう埋めていくか、どのようにして手を取って取り組んでいくことが大切かを追求しなければならないと考えています。

坪井氏

それでは各々どのようにすればいいとお考えでしょうか?

高部氏

低投票率克服に統一投票日にしようと議論があった。現在統一地方選挙があるが全てが実施されているわけではなく、理想は全自治体統一がふさわしいと思う。

衆参の補欠選挙はある程度日程を統一にしようという議論がある。また選挙制度根底から見直す必要も出てくるのかもしれない

なり手不足については、労働法制の検討も必要ではないか?

例えば公務員の兼業禁止問題。公務員が立候補した段階で退職となる。当選すればいいが落選した時にその後の生活が成り立たない。

また議員も・・

地方自治体議員が、都道府県議会議員や国政選挙に立候補する際、立候補届を提出した段階で自動辞職となる。

これも公務員と同様当選したらいいが落選した場合の事を考えるとなかなか立候補に踏み切れないのではないか。

また議員立法にこだわりすぎるのもよくないと考える。さらに決算認定の工夫も必要ではないか?

横田氏

どこかの自治体で中学生が議論する場があった。こういった取り組みが将来に市を支えることにつながるのではないか

中長期的に検討する機械など必要ではないか。

また女性議員を増やすには議員になる条件整備が必要かもしれない。

私はネット会議などでパソコンを通じて会議を進める方法を取り入れている。女性ならではの時間配分・ペースがある。特に子育て世代ではパソコンの周りを子どもが走り回って女性が注意しながら会議がすすむってこともある。

議会でこのような取り組みにハードルは高いと思うが、条件整備も検討しなければならないと考えます。

 

古川氏

私個人的な意見としては、議会改革って本当に必要ですか?

歳費の使い道まである面監視されている議員が多い。そんなことで誰が議員になりたがると思いますか?

先ほどもあったように悪いことをする議員は確かにあるが、絶対的多数はまじめに議員活動や議会活動に取り組んでいる。

報道の方法も考えてほしいものです。

基本的に地方議員は地域密着型で、リスペクトされればいいと考える。

田鍋氏

高知市では議会だよりで情報発信に努めています。

また具体的な議会改革の中でホームページの充実、一問一答形式の導入などで分かりやすい議会運営を提示することによりなり手不足を解消できればと考えています。

この後、会場より質疑応答があり、コーディネーターの坪井氏より翌日の課題討論でさらに深めたいと提案があり第2部は終了しました。

終了後、次期開催地の長野市よりご挨拶をいただく予定であったのですが、先の台風被害で復興途中ということもありビデオでのご挨拶となりました。

一日も早い復興を改めてお祈りいたします。

※第3部は立食懇親会が開催され各議員意見交換が行われていますが、新政クラブは出席しておりません。

 

 

報告3課題討論~議会活性化のための船中八策~

令和元年10月31日午前8時10分頃、高知県合志市布師田3992-2高知ぢばさんセンターへ到着。

第2日「課題討論」が行われました。コーディネーターは前日に引き続き坪井ゆずる氏が務められ、事例報告者として滝沢一成上越市議会議会改革推進会議座長、久坂くにえ鎌倉市議会議長、小林雄二周南市議会議長より行われました。

滝沢氏

 平成28年市議会議員選挙では定数32名中女性は1名。当選時40歳未満が3人となったことを受けて危機感から議長提案で議長の諮問組織として「議会改革推進会議」が設置された。

(その女性議員も県議選出馬のため辞職され現在女性議員は0名)

目的として、男女を問わず各年齢層から市議がいることが望ましい。市議を目指しやすい環境とは何か?市議を目指すことを阻害する現状の要因を把握することをあげられました。

その中の議論として

「市議をめざせないではなく、目指さない」「議会の事を知らないし知りたくもない。もともと興味がない」「やりがいが感じられない。そもそも誰がそんなものなるか」という議論から「議会」の見える化が第1と考えたそうです。

その中で、まずはやる気にさせる、そのうえで阻害要因を取り除くことが重要。

やる気にさせるためには、選挙費用の不安、報酬や身分保障への不安等があげられます。そういった意味からは議員年金の復活(特権的年金ではなしに各自治体職員が入る年金に入る)は必要です。

また環境的要因として、地域の理解という壁、家族の理解という壁、女性特有の壁ももちろんあるといった問題を出しあい月2回ペースで開催してきました。

さらに市民との意見交換会も開催し市民目線で活発な議論が行われました。

その中で5つの大項目と19の小項目で構成する提言をまとめられたそうです。

その具体策として

①議会傍聴の改革・活性化

②模擬議会、議会体験学習の実施

③意見交換会の改革

④広報PRの充実

⑤選挙マニュアルの作成

⑥議員報酬の適正化

⑦女性フォーラムの開催

と取り組まれました。

まとめとして、見える議会・魅せる議会は、①住民協同力②行政との対峙力③立法力④情報収集発信力であり、議会改革推進こそ議員を目指す人々を獲得する大きな力であるとおっしゃっていました。

久坂氏

 久坂議長よりは「女性議員の現状の視点」というテーマで発言がありました。

鎌倉市議会では出産が欠席理由と定義されておらずご自身のご出産の際大変苦労されたという点と、その過程で出産時での対応を検討整理されてきたことをお話されました。

女性活躍推進法が施行された現在ではあるものの「議会」の中で、出産・子育て世代の女性議員が本当に活躍できる条件整備が進められているのかが課題であり、女性議員を増やすにはこの問題を解決しないといけないと指摘されました。

その環境整備にむけて、①出産に伴う議会の欠席に関する規定について、取得期間及び運用についての考え方②子の看護休暇に関する規定の整備③配偶者出産休暇の取得等あげられております。

貝塚市ではこのような規定は設けられていない事が女性議員がなかなか誕生しない理由の一つなのかもしれません。

そればかりでなく、性の多様化が進んでいる中で「ジェンダーに配慮した議会の行動計画」にそって議会と仕事・家庭の両立のために課題を解決していかなければならないと感じました。

小林氏

 市町村合併に伴う議員報酬問題により議会解散を問う住民投票が実施され最終的に議会を解散した周南市。

解散後実施された市議会選挙後に当選されたメンバーで同じことを繰り返してはならないということで議会改革の議論がスタートしました。キーワードは「公開」と「対話」との事でした。

その中で30項目にわたって新たな事業や改革に取り組まれました。

おそらくどの議会でも同様の事が議論されているのだと思います。貝塚市においてもほとんど取り組まれていますしさらにバージョンアップを目指したいと感じました。

この後会場より質疑などがり、最後にコーディーネーターの坪井氏からまとめとして、「船中八策ということから、今回の研究フォーラムで8つの策をまとめてみたい」と提案がありあました。

全国市議会議長会IN高知~船中八策~

①行政監視機能の向上

②次世代を見据えた議論

③データを踏まえた議論

④多様性の確保

⑤96条第1項2項の議論

⑥労働法制の見直し

⑦情報公開の徹底

⑧(不明確)

とあげられました。8つ目は会場から意見を取り入れられ全体のまとめになりました。

今回の八策はあくまでも研究フォーラム内での事で、そのほかにも取り組まなくてはならない事も多数ある事が提起されまとめとされました。