長岡市視察報告書 ←PDFファイルはこちらから
はじめに
令和4年11月9日、午後3時頃、新潟県長岡市大手通1丁目4番地10のアオーレ長岡(長岡市役所)へ到着。
同市議会事務局議会総務課政策調査係望月葵衣主事のお出迎えを受けました。
同市議会山田省吾副議長より歓迎のご挨拶をいただき、阪口芳弘会派代表よりお礼の言葉が述べられました。
報告1 「アオーレ長岡について」
アオーレ長岡については、同市市民協働推進部市民協働課の五十嵐智行課長、同アオーレ交流係の永井英雄係長よりレクチャーを受けました。
長岡市は、平成17年から3度の合併を繰り返してきた町です。広大な面積で目の届かない現状がありました。
一方で過疎化を何とかしたいという想いもあり、人が来やすい庁舎をとの機運も上がってきたようです。
アオーレを作ったことにより人の流れも変わったようです。
「アオーレ」とは、方言で「会いましょう」という意味で、「施設で会いましょう」という想いを込めて名付けられました。
デザインは国立競技場をデザインした隈研吾氏です。木の質感を生かしたデザインが特徴的で「木そのものが持つ良さを感じてほしい」とこだわりました。
市内で生産されている「栃尾袖」や「小国和紙」を取り入れるなど暮らしのぬくもりを大切にされています。
アオーレ長岡は、市民と行政が一体となった施設を目指しました。、また冬季でも様々な活動が行える“ナカドマ(屋根付き広場)”と市役所本庁機能を一体的に配置した複合施設となっています。
市民協働・交流の拠点となる事をコンセプトに、設立10年を迎え約1,200万人(年間100万人から130万人)が利用されています。市外からも年間約5,000人が見学に訪れる施設となりました。
アオーレ長岡はJR長岡駅から直結し、市民の心のよりどころとなる場所をめざしています。
場所は長岡城の二の丸があり、その後「長岡市公会堂」「厚生会館」と移り、10年前にアオーレが誕生しました。
また西館の議会棟にも市民交流の視
点があり、文化交流ホールやホワイエで展示されたりもしています。
全体的には、いろんなイベントのできる空間であり日本建築の土間をイメージした造りとなっています。
「ナカドマ」は24時間カギ無し、どこからでも自由に出入りできる屋根のある広場です。市民が自由に使える空間をめざしています。基本規則無し、自由に使う事のできる空間となっています。
アリーナは、5,000人が収容できるものとなっています。スポーツやコンサート、成人式などのイベントに使用されています。
さらに、Bリーグ(バスケット)の「新潟アルビレックスBB」のホームアリーナとしても使用され、バスケットによるまちづくりも進められています。
その他の使用方法として、Vリーグ公式戦・大相撲・プロレス・アイススケート等開催されています。
市役所機能としての執務室はガラス張りで木材は新潟県産を利用し木のぬくもりを感じさせられるようなデザインとなっています。
市民サービスに力を入れ、ワンストップサービスを実現しております。「市役所なんでも相談」コーナーもあり、コンシェルジュが対応しますが、コンシェルジュで分からないときは担当の職員が相談コーナーに出向き説明、申請するようです。
市民が移動するのではなく、職員が移動する。まさしく市民サービスが行き届いた体制となっているように感じました。
議場も1階に設置し、ガラス張りの議場で市民に議論を見てもらう事を意識して作られているようです。
アオーレ自体は低層階の建物となっており、景観と耐震を考えた施設となっています。
平成16年に発生した中越大震災で災害本部である庁舎に影響がでて、庁舎耐震性の不足が認識されました。
新しい庁舎を建設しようと「中心市街地構造改革会議」が組織され、「市政だより」で情報提供され、市民からの意見も取り入れながら進められました。
そんな中で、公共交通の利便性、コスト面、まちづくりの観点から市街地に移転することが最適との結論が出ました。
また、大手通りを中心に「まちなか市役所」として分散による業務を行うことも決定されました。
アオーレが低層の建物であるために全ての庁舎機能を持つことができなかったからです。
分散による市民サービスの低下を防ぐための総合窓口を設置されました。前述の「市役所なんで相談」がその取り組みです。
平日は午後5時15分まで、休日も午後5時まで開庁しています。
職員には5年かけて意識改革(研修)を行い、「市民」ではなしに「お客様」という意識で対応する訓練も行ったようです。
この点については、どんな建物であれ、どこの市でも取り組めることではないかと感じております。
一方、利用料のお話もお聞きできました。
ナカドマ、ホワイエ、市民交流ホールについては市民であれば無料で貸し出しされます(営利利用は別途利用料が発生)。アリーナについては会議室で150円から300円(1時間あたり)となっており安価で利用することができます。
使用に際する「ルールは作らない、自由度の高い運営を」実現させています。
これまで自由な発想で取り組まれていたのは
・アオーレ長岡酒の陣
・アオーレ!ドイツフェスト(ドイツとの姉妹都市を結んでいる)
・越後みしま竹あかりinアオーレ長岡
・山古志闘牛Inアオーレ
山古志は合併された地域で、闘牛は山古志でしか取り組まれていません。アオーレで行うことにより広く認知されることになりました。
・保育園の遠足
・ナカドマ結婚式
・ファッションショー
・ランチコンサート
・高校生ラーメン選手権
等々となっています。
一通りの説明を受けた後、質疑応答をさせていただきました。
建設コストは131億円。ランニングコストは年間約5億円。国の支出金として29億、地方債として54億円。市都市整備基金より45億円。一般財源としては約3億で建設されました。
さらに「アオーレ市民債」を発行。25億円集め、5年満期で一括返済もされたようです。
色んな知恵が結集され、市民による市民のための施設であることがうかがえました。
さらに施設稼働率も令和3年度で75.12%と非常に高く驚きました。これはやはり無料で利用できることも多いのではと感じました。
質疑応答の後、施設内見学をさせていただき、1日目のレクチャーは終了となりました。
報告2 「子育ての駅について」
令和4年11月10日、午前9時30分頃、アオーレ長岡へ到着し、同市議会委員会室にて「子育ての駅について」同市教育委員会子ども未来部・子ども・子育て課の佐藤隆課長補佐よりレクチャーを受けました。
長岡市では3度の合併が繰り返され、子育て支援の在り方の整理も進められてきました。
その中の議論で就学前の子ども達の施策については教育委員会が担当することになりました。様々な議論もあったようです。
合併を繰り返し旧町村には支所がおかれ、それぞれ支所でも子育て支援にあてられます。
雪国であり、家に籠りがちで子どもをつれて外出できない状態もあり、親同士のつながりも欲しいという視点で保護者の声を聴きながら支援施策を設置されました。
子育ての駅については、公園を担当する部署にするか、子育て支援の部署となるかも議論となりました。それぞれの「無理」な部分を解決し、統合することで実現しました。
縦割りで統合できるのは市町村の強みであるともおっしゃっていました。
その後具体の取組みについて説明いただきました。
子どもの成長にあわせた一貫した支援体制を構築しようと、教育委員会に母子保健・保育園・子育て支援を平成19年4月に統合し、「子ども家庭課」と「保育課」を新設し子どもの施策を統合されました。また平成23年4月には教育委員会に「子育て支援部」を設置し、平成28年4月に「子ども未来部」に改称し子育て支援を実施しています。
その中で「子育ての駅」を創設し、オリジナル“保育士や子育てコンシェルジュのいる屋根付き公園”を創設されました。
屋根付き公園で全天候に対応できるものです。
先に述べられたように「公園が担当か?福祉(子育て支援)が担当か?」という議論がありましたが「公園として子育て支援施設を作ろう」と結論づけられました。
ハード面を都市公園の補助金等を活用し、ソフト面では子育て支援交付金を適用するなど工夫されました。
雪国のお父さん・お母さんの声から生まれた施設でもあります。分野別に横断したり縦断したり連携・融合を実現させた施設でもあります。
①子育ての駅「てくてく」
平成21~24年の間に長岡市では4つの子育ての駅を創設。うち3つは旧長岡市へ、1つは合併された地域でスタートされ、平成27・28年の2年間で9カ所の「地域版子育ての駅」を開設されました。
その一つが「子育ての駅てくてく」です。建物も□△○をつなぎ合わせており、それぞれ子育て支援の取組みが行われています。これは幼児が一番に認識する形がこの形であるそうです。
工事費が4億800万円で内一般財源が7万円というもので市の持ち出しの少なさに驚かされました。
令和3年の入館者は約6万人で一日平均211人となっています。新型コロナウイルス感染症の越境で来場者も半減したようですが、創意工夫した取り組みが進められています。
子育ての駅サポーターを募集し福祉系の専門学校生に登録してもらい活動を続けています。
②子育ての駅「ぐんぐん」
ながおか市民防災センター内に設置されNPO法人が運営している施設です。
子育て支援と市民防災の機能が融合した全国初の施設で、ミニキッチンがあり離乳食の実演や試食も行われています。
工事費が5億3千万円で市の一般財源が10万円となっています。
令和3年度の利用者数は29,300人で一日平均99人となっています。
この施設は、平成17年の中越地震時には仮設住宅が建設された場所で東日本大震災時には長岡市内から救援物資が集められた場所です。
そこで「防災」と「子育て」を合併した施設運営がスタートしました。
③子育ての駅ちびっこ広場(まちなか絵本館)
約13,000冊の絵本や児童書があります。また、保育士を配備した絵本館で司書が親子で楽しめる絵本を選んだりしてくれます。
市中心市街地のフェニックス大手ウエストにあり、高校生たちが気軽に集いあうこともできる場所となっています。
令和3年入館者数21,064人で一日平均61人です。
④子育ての駅「すくすく」
地元で子育て支援を行ってきた団体の良さを生かし地域の実情にあったアットホームな雰囲気で運営。
令和3年入館者数は3,844人で一日平均20人です。
⑤地域版「子育ての駅」
各支所に子育て支援体制を強化するため、全地域に「地域版子育ての駅」を開設(9か所)
その全ての子育ての駅に「子育てコンシェルジュ」を配備し、子育て相談や寄り添い、見守りなどを行っています。
またこれらの施設は、震災時などは「子育て安心避難所」と位置づけらえれ、安心して過ごせる居場所にも役立つ事になっています。
⑥長岡版ネウボラの実施
産前産後に心身が不安定になりやすく、育児疲れなどストレスがたまります。そんな悩みを解決するために「長岡版ネウボラ」の取組みがスタートしています
ア)産後ケアコーディネーターを配置
・助産師1名・保健師1名でニーズに合った子育て支援のプラン立てなどを行っています。
イ)産後デイケアるーむ
・「ままリラ」
助産師・保健師・母子保健推進員・栄養士などで産後ケア
「ままリラ」のリラはリラックス。リラックスできる子育てを目指しています。
・「ままナビ」
保育士から母子が一緒になり具体的な育児を学びます
ウ)ままのまカフェ
・母子保健推進員が子どもを預かり、親同士がお茶を飲みながら情報交換したりゆったりした時間を過ごせます
エ)産後ケア訪問
・特に必要な産婦に出産直後から沐浴、乳房ケアなどを行っています。
オ)産前産後寄り添い支援訪問
・母子保健推進委員が家庭訪問に加え、無料で育児を手伝いながら相談相手となります。
⑦父親向け、祖父母向けリーフレット配布
家族みんなで子育てする事を応援しています。
⑧子育てアプリ「母子(ぼし)モ」
スマートフォン向けアプリで、妊娠・出産に対する行政サービスの検索や妊娠中の体重グラフ表示などを行えます。
⑨子ども家庭応援ブック「おやこスマイルガイド」の作成配布
Q&A形式でわかりやすいまとめになっています。
⑩思春期向け次代の親育成事業
中学生が対象で乳児期や親子とのふれあいを通じて子どもに対しての愛着や命の大切さを学ぶ
⑪マタニティライフ応援給付事業
現金給付。お祝いの気持ちと安心して出産できるよう応援。以前はチケットを使用していたが使えるお店も限られ現金支給としたようです。
以上、ご説明いただき、質疑に入りました。
設置後の市民の反応などは好評で、コンシェルジュのいる子育ての駅には相談も多い。ただ、コロナウイルス感染症の関係で締められた施設もあるが、電話相談などは継続され重宝されたようです。
ふらぁ~と遊びに来た方もコンシェルジュが顔色を見て相談員につなげたりしているようです。
課題としては、建物の維持費が今後の課題。老朽化してきており心配は絶えません。
また「てくてく」の□部分の建物は空調が完備されておらず夏は暑いし冬は寒く検討しなければならないとおっしゃっていました。
また、ハードについては今後増やす予定はないがソフトの充実を図りたいとの事でした。
さらに運営費については、「てくてく」については、約3,000万円、「ぐんぐん」については1,600万円とご説明いただきました。
以上ここまでご説明いただき、子育ての駅「てくてく」へ移動しました。
「てくてく」では、駅長(園長)の「なかの」さんが施設を回りながら説明いただけました。
新型コロナウイルス感染症の影響で遊び道具も制限しているようですが、子ども達が元気に動き回り、お母さん方が温かい目で見守っている姿が印象的でした。
また、野外公園で遊んでいる子ども達の笑顔も印象的でした。
施設では□(しかく)では大きな滑り台やミニ自転車などもあり子ども達が元気に動き回る「運動広場」として利用されています。
△(さんかく)では交流サロンとして本来ならパパ・ママカフェのようなゆっくり休憩できる場ですが、現在はコロナの影響で飲食は無しで休憩所として利用されいます。
○(まる)は赤ちゃんも遊べるコーナーでもあり。授乳室や相談室などもあります「遊びの広場」として活用されています。
報告3 「生ごみを利用したバイオガス化事業について」
令和4年11月10日午前11時頃、新潟県長岡市寿3丁目6番1号の長岡市環境衛生センターへ到着。
長岡市環境部環境施設課の平澤秀康課長、同小林芳文主査及び、事業者である㈱長岡バイオキューブ清水氏の出迎えを受け施設見学をさせていただきました。
主に事業者の清水氏よりの説明となりました。
まず、バイオマスの定義は、再生可能な生物由来の有機性資源という言葉でまとめられる(化石燃料を除く)。またその中で廃棄物系のバイオマス、未利用のバイオマス、資源作物によるバイオマスに分類されています。
廃棄物系の食品によるバイオマスの利点として、
①再生可能
②生物の植物由来の資源で炭素が光合成で二酸化炭素から取り入れているので、カーボンニュートラルになる
③新たに使わなければならないエネルギーが少ない
とあげられ、逆にデメリットは
①匂いの問題
②微生物を使う。生き物の管理をすること。調子がいいか悪いかを一定の管理が必要
③ものを集めてこなくてはならない。手間がかかる
というものでした。
長岡市ではごみの減量化を推進することを目指しています。
年間ゴミの排出量85,000t。うち20,000tが再生され、5,000tが不燃物と予想を立てられました。
実際は、13,000tが年間の排出量で、うち25%がビニールや紙おむつなどで利用できない生ゴミ類となり、10,000tを利用。
本来の機能は20,000tを処理できるのですがゴミの減量で約50%の利用となっているようです。
人口の減少、家庭での「もったいない運動」もありその減少の要因にもなっているようです。
施設として半数の稼働というのは厄介な事で、想定した施設のスペックを維持するものも運転上は難しい面もあるとおっしゃっていました。
現在のごみ収集のサイクルでいうと毎日、家庭系ごみが搬入されているわけではなく、ゴミを貯蔵する施設が必要となります。
現在パッカー車で120t分蓄えられ、1日で65t処理できる設備があるのですが、実際は35t前後の処理となります。
設備としては、家庭系40tが2基、事業系20tが2基で運転しています。長岡花火大会や夏休みなどが必然的にゴミの量も増えるので助かっているのではありますが、コロナ禍でそうしたイベントもない中でも運営も厳しいものがありました。
受け入れからバイオガス化への流れは
受付ホッパーから粉砕装置へかけ、不適物除去装備にかけられます。そして1週間ほどかけて発酵設備で処理されながら、バイオガスが誕生します。
そしてガスホルダーに貯蓄されガスエンジン発電機にかけられます。
ガスホルダーについては、稼働10年が経過。中を開けたことはないのですが、不要なものも溜まっているでしょうし、効率も悪くなってきていますが、現段階では許容範囲と想定しているようです。
そしてガスエンジン発電機へ移動しました。低カロリーの状態でエンジンを回している状態(100%フル稼働していない)なのですが、国の固定価格買取制度を利用して1kwhにつき39円+消費税を20年間保証され発電した量の88%を売っているとの事でした。
バイオマスの発想はヨーロッパの酪農地帯。自分たちの牧場の畜産廃棄物を発酵させ肥料としているのが元々の発想でありますが、この施設ではなかなか処理がうまくいかないので補助燃料として使っているとお伺いしました。
この事業は、「民と官」が連携して運営しています。民間の資金、経営能力及び技術能力の活用によって、財政資金の効率的かつ効果的活用の為PFI法に基づき実施されています。
この取り組みによって、年間2,000tのCO₂の削減が行われています。